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高坂希太郎さんは、この夏サイクリストの話題を独占した映画、茄子アンダルシアの夏の映画監督だ。映画のプロモーションに奔走し、多忙な日々を過ごしたこの熱い夏を振り返ってもらおう。
‐茄子アンダルシアの夏の反響はどうでしたか?
高坂 当初考えていたよりは、はるかに大きな規模で展開できたおかげで、いろいろな人に観ていただけた。このことは凄くうれしい。観た人から「良かった」という声が聞けて、幸せな気分ですよ。
‐当初考えていたこととのギャップとは?
高坂 本来はビデオ用に作っていたものが、半分無理やり劇場化されてしまったんですよね。一般の方がわざわざ映画館まで足を運んで観る映画なのかなぁ?なんて後ろめたさもあったんですけれど…。
‐ああ、そういう事情でしたね。もともと日本では自転車というスポーツが一般の人に広く根付いていないところで、けっこう冒険的だったかも知れませんね。数字的にはどうだったんでしょうか?
高坂 サイクリストの皆さん大勢の方々に観ていただいたんですが、結局は正直言って上映売り上げでペイすることはできなかったんですよね。興行収入ではぜんぜん赤字。それは残念なんですけど…。観客動員数は16万人と聞いています。今後、海外売りとビデオ売りでどうペイをしていくかというところ。ま、あんまり夢のない話をしてもね…。
‐これは書かないほうが良いかな…(笑)。一般大衆はどうあれ、自転車ファンの反響は大きかったですよね。16万人が観たというのは、自転車ファンの実数からすればすごい数だと思いますよ。試写会の時には立ち見続出で見られない人もいたくらいだから。
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| シマノ鈴鹿ロードを走る高坂さん。上級クラスでも余裕の走りを披露する |
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高坂 結構新しい試みの多かった映画なんです。上映時間47分という映画の尺と、自転車というテーマ。わりと興味を持つ人がいるのではないかとかすかな期待があったけれど、結局は大作の方に人が流れていったということですね。考えてみれば、日本人が映画を見に行くって行為に「気楽さ」ってあんまりないですよね。ちょっと構えるというか、「これだけお金を出すんだから、ゆったりとした時間の中で豪華な画面を見たい」というようなところが…、自分の中にもあるし。やっぱりそういうことだったのかなって。
‐そうですね、確かに欧米人のような気楽さはないですよね。いっそ豪華版にしたら良かった? 2時間ぐらいの。
高坂 僕的にはカンヌ映画祭まで行けて、その時点で成就したというか、良かったかな、と。
‐自転車の盛んなヨーロッパでは、日本のアニメが自転車を題材にしたということ自体が驚きかもしれませんね。今後ヨーロッパで評価されたら、またその評価と一緒に逆輸入されるでしょう。今までに印象に残っている(観客からの)感想はありますか?
高坂 そんなに僕の耳には届かないんです。「ラストのシーンが良かった」などと言われることはあるけど、ダイレクトに手紙等で届くようなことはなかなかないんです。でも協力してくれた人もとても喜んでくれたし、やって良かったと思っている。菊田潤一さん(元プロ選手)のお子さんが、家族で観に行った後に絵を送ってくれたんです。それは宝物として大事にとってありますよ。
‐観てくれた人へのメッセージをどうぞ。
高坂 それはもう、ひたすら「ありがとうございました」としか言うしかないでしょう。「また、次も」とは、言いたくても言えないし(笑)。
‐映画館で観れなかった人はDVDを。12月の発売が決まりましたね。
高坂 そうなんですが、これが高いんですよねぇ。4800円。これは1枚なんですけど、2枚組みで9800円のもあるんです。豪華バージョンとか銘打っているんですけど、製作過程(メイキング)や僕がカンヌへ行ったときの記者会見の映像とか、そんなのが入っているんです。Tシャツもついてるんですけど、そこまで酔狂な人がいるんですかねぇ(苦笑)。
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| レースの応援にやってきた子供たちと。「娘たちと同じレベルで話をするからパパというより友達みたいなもんです」 |
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‐それはサイクリストにとってはかなりのプレミアムなんですが。だってパオパオジャージなんかも結局は売り切れ&増産ですものね。
高坂 象さんだけに増産…(笑)。パオパオビールのほうも結構売れ行きが良かったという話でしたが…。実際どうだったかはあまり知らされていないんです。
‐次はご自分のことを。高坂さんが自分でもロードレースに出てることは周知の事実になりましたね。「僕にとってのロードレース」みたいな話を聞かせてください。
高坂 今年は半分「仕事」みたいになっちゃいましたよね。そういう意味じゃつらい面もありましたよ。
‐つらい面というのは?
高坂 あまり人前に出るのは得意じゃないから…。シマノ鈴鹿も、最初は仲間うちの菊田さんと黒田硫黄さん(原作者)と僕とで、ただ走りましょうよ、という感じだったんだけど。
‐ああ、サイン会をやったことですか。なんだか引っ張り出された感じでしたね。
高坂 サイン会といっても、自分はタレントでもないから人もそんなに集まらないと思っていたんですけどね。ちゃんとビールで人を釣ってましたね(サイン会に並んだ人にもれなくパオパオビールが1本ついていた)。 ‐すごい数の人が並んだ。決して皆がビールに惹かれたわけではないと思いますよ。タレントさんならまだしも、監督さんがそういう対象になるのはちょっとビックリしました。高坂さんはサイクリストにとってそういう存在ということですね。
高坂 僕はちょっと前までは「向こう側」にいた人間ですから。それが、少し意識過剰になってしまったり、何か変に神経を使ってしまうようになっちゃって。もっとも、周りがそう扱うから僕もそうなっちゃうんですけど…。なんかちょっと、ピュアに楽しめなかったところはありますね。自転車屋さんにも買い物に行きづらくなっちゃって、最近は行きつけのお店にしか行けない。けどまぁ、走ってしまえば楽しいから関係ないかなぁ。
‐監督って俳優と違ってあくまで作る人ですからね。作品で語られればいいのだけれど、表にひっぱりだされて。それが好きな人はいいでしょうが、高坂さんは確かにあまり得意ではなさそうですね。
高坂 えぇ。映画のプロモーション上はそういう方針だったらしいんですよ。ちょっとつらかったですけどね。まぁ、いろんな人に出会え、今まで体験したことないようなことができて面白かった。いい勉強になりましたね。
‐話題を変えますが、映画の題材にしたブエルタやツールなど、海外のレースというのは高坂さんにとってどんな位置づけなんでしょうか。
高坂 ひとりのファンですし、選手を見ていると勉強になりますよね。励まされたりもするし、自転車レースは人間ドラマみたいな面がありますから。
‐ハマった原因は、やはりツールですか?
高坂 そうですね。97年のウルリッヒが勝ったときからですね。その頃から徐々に走っている選手の名前が分かってきて、ロードレーサーの美しさが分かってきたんですね。これはちょっと奥が深そうだなって思った時期ですね。自転車レースに関してはまったく無知だったのですが、単純なパワーゲームではないってところにグイグイと引き込まれていきましたね。ちょうどまた、CSの放送も良かった。あの頃は、レーサーたちの集団の、何気ない単調な列の動きの中に意味があったりだとか、すべてが新鮮でした。そして、少し分かるようになるとますますハマっていく。新しい発見をすると、なんだか人に伝えたくなるじゃないですか。自分はこうした仕事をしているので、なんかいい題材ないかなぁ、と思っていたところに丁度、黒田さんの原作と出会って、今回に至ったという。僕が自転車を題材にした映画を作ることができたのは、ある種、流れとしては自然だったのかもしれないですね。
vol.2へ続く…
photo&interview:Makoto.AYANO |
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